住宅における良好な温熱環境実現研究委員会

研究成果・提言

研究成果

⑤既存住宅における対策

 膨大な既存住宅の改修は、年代が古い住宅ほど、戸建住宅、共同住宅ともに断熱・気密性能が劣り、温熱環境の改善が困難である。しかも、これらの住宅には、高齢者が居住していることが多い。
 既存住宅の改修対策は、断熱・気密性能が劣ることに加え、経年劣化による材料や構造上の問題や、設計、構工法が多様で画一的な対策が取れないこと、居住者が生活しているため居ながら改修となること、時間的、経済的な余裕がとれない等、多くの制約が考えられる。現実的な解決のためには、ストックの特質を踏まえた対策を行うことが重要となる。戸建住宅、共同住宅等多くの住宅における改修対策を表4に示す。

表4 既存住宅(改修)における良好な温熱環境実現のための対策
対策の区分対策の例内容グレード



プラン
ニング
  • 水回りの内部への移設
  • 水回りと主居室の連続化
  • 低温部分(玄関等)とその他の部分の区画
住宅全体、生活空間改修の場合、水回りを含めた連続化、一体化を図る。玄関周りの冷気侵入防止対策として区画を設ける。


断熱
構造
  • 住宅全体の高断熱・高気密化
世帯人数が少ない場合、日常生活空間の断熱・気密強化は現実的解決策。現在の断熱気密は新築住宅レベルを目指す。
  • 日常生活空間の高断熱化(その他部分は既存の断熱構造)
  • 外面水回り部分の高断熱化(その他の部分は既存の断熱構造)
水回り空間の特に外気に面した部分の断熱を強化する。開口部との一体強化を図る。


  • 高性能サッシへの交換(カバー工法等)
  • 既存窓のガラスの高性能ガラスへの交換
  • 既存窓に内窓を追加設置
開口部の断熱気密強化は、既存窓に追加する等、現実的で経済的な工法等多様な提案が想定される。
玄関
ドア
  • 高性能玄関ドアへの交換(カバー工法等)
  • 既存玄関ドアの扉の性能強化(断熱補強パネルの追加設置等)
断熱強化玄関ドアの取替え、既存玄関ドアの断熱強化策等。気密処理についても配慮する。

暖房
設備
  • 居室暖房+水回り暖房の新設
日常生活空間である居間等の暖房が基本。水回り空間は、それを補う設備を設置、運転する。





浴室
  • 在来浴室のユニット化(断熱型、一般型)
  • 既存ユニット(一般型)の断熱型への交換
  • 適切な温度制御ができる湯張り方式
在来浴室は断熱性を配慮し、ユニット化が望ましい(断熱気密強化を図ること。その上で暖房設備設置、運転すること)。浴湯は、温度制御が可能で、その湯温を示し制御できることが望ましい。
洗面
脱衣室
  • 足元接触部の冷たさ排除(材料、工法)
  • 適切な温度制御の給湯設置
素足で接触する床面温度に配慮する。洗面等利用時は、適切な温度制御を可能とする設備を設置する。
トイレ
  • 和式便器を洋式便器に変更
  • 暖房便座設置
トイレ内の温熱環境を確認して補助暖房等で補う。身体負担が少ない洋式便器とし、暖房便座を設置する。
※Ⅰ、Ⅱ、Ⅲについては、それぞれ以下のようなグレード対策であることを示す。
 Ⅰ 水回りの改修、暖房設置を行う対策
   ①の対策:浴室暖房装置のみの対策、②の対策:水回り開口部の対策と暖房設備を補う対策、
   ③の対策:開口部対策、外気に面した部分の断熱強化、浴室ユニット化と合わせて浴室暖房を設置する対策
 Ⅱ 主たる生活空間についての断熱区画設定・暖房設置を行う対策
 Ⅲ 住宅全体の断熱・気密化及び暖房設置を行う対策

 戻 る