住宅における良好な温熱環境実現研究委員会

研究成果・提言

研究成果

詳しい研究成果について記載した「住宅における良好な温熱環境に関する調査研究報告書」は、電子ファイル(PDF)をダウンロードしてご活用いただけます。

〇研究の全体像

※1:
本推計は、現状入手可能な限られた調査結果等から概況を把握するため、いくつかの仮定をおいて試算したものである。推計結果の活用にあたっては、十分に試算条件を理解し使用すること。

提言

提言書「「住宅における良好な温熱環境」の実現に係る提言書?より安全で健康に資する住宅ストックの実現に向けて?」は、電子ファイル(PDF)をダウンロードしてご活用いただけます。

提言の背景・目的
(1) 現状認識
  • 現在、国土交通省の実施しているスマートウェルネス住宅等推進事業調査において、住宅において良好な温熱環境を整えることが、血圧の改善、入浴リスクや夜間頻尿リスクの低減につながるとの知見が得られつつあるなど、住宅の温熱環境が、健康に大きく影響することが明らかとなりつつある。
  • 一方で、わが国の住宅の温熱環境は劣悪であり、既存住宅の7割程度がS55年省エネ基準レベル以下である。特に、浴室・脱衣室・トイレの水回りについては、温熱環境上の配慮がなされていないことが一般的である。
  • 冬季に浴室・トイレ・脱衣室等において低温に曝されることは身体に悪影響があり、また、居間・脱衣室が寒いために、高温かつ長時間の入浴をすることなどが原因と考えられる浴槽での溺死者が、統計上把握可能な範囲で年間約5000人発生している。
(2) 対応方針
  • 新築住宅では、高気密・高断熱の対策をとることが、省エネだけでなく、健康にも資することに鑑み、暖房機器や空間計画での対応も含め、高いレベルで対策を実施することが考えられる。
  • 既存住宅については、温熱環境が劣悪なものが多いことから、費用面での実現性を考えつつ、少なくとも水回りの断熱改修や浴室等への暖房機器設置を実施するべきである。
  • 対策を効果的に推進するためには、一般ユーザー等に対して、良好な温熱環境確保による効果等について普及・啓発を行っていくことが重要である。
(3) 提言の目的
  • 本提言は、以上の対応方針のもと、委員会において検討した新築住宅・既存住宅改修における具体的対策が出来る限り早期に幅広く実施されるように、各方面に働きかけるものである。
各主体への提言
(1) 一般ユーザーへの提言
  • 住宅の温熱環境と健康が大きく関連していることを認識し、その上で、部屋の温度を把握することにより我が事として危険性を認識した上で、住宅改修を行う等温熱環境の改善を図り、低温への曝露を防ぎ、高温かつ長時間の入浴を避けるなど、適切な対応に努める必要がある。
  • なお、入浴事故を防ぐ安全対策として、「湯温41度以下、湯に浸かる時間を10分までとする」ように努める必要がある。
    ※消費者庁記者発表:「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故にご注意下さい!」
(2) 事業者(団体)への提言
  • 住宅生産に係る事業者は、新築住宅において、住宅における温熱環境の重要性を十分に理解し、適切に設計を行うことで、出来る限り高いレベルの温熱環境を実現することが必要である。
  • 既存住宅改修においては、少なくとも本委員会で定めた「住宅改修における水回りの設計に資する温熱環境暫定水準案」を参考に改修を行うことが求められる。その際、関連する事業者は、温熱環境改善に係る設計や施工についての能力を備えるとともに、一般の方へ説明する技能に係るスキルアップにも努め、温熱環境の改善に寄与するべきである。
  • 部品・設備メーカーにおいては、温熱環境の確保・改善において、水回りの断熱対策や暖房対策が重要な要素であることに鑑み、良好な温熱環境の実現に役立つ部品・設備の開発普及に努め、更に、簡易な工法や安価な設備等の開発等を行うことが求められる。
  • 医師、保健師、看護師、介護士など、在宅医療・在宅介護に携わる事業者及び専門職の方は、住宅の温熱環境が高齢者等の健康や入浴習慣に影響を与える要因となることに留意することが求められる。
  • 関連する上記全ての事業者が、あらゆる場面を活用し、入浴方法の改善や、住宅における温熱環境が健康に与える影響、温熱環境を改善するための住宅改修方法などについて、幅広く普及・啓発活動を行うことが重要である。
(3) 国・地方公共団体への提言
  • 住宅における良好な温熱環境確保は喫緊の課題であり、国はさらなる科学的知見を整備し、それに基づいて、住宅全体に係る温熱環境水準を示す必要があると考えられる。
  • 住宅における対策を量的に意味ある形で進めていく際には、住生活基本計画(全国計画)に成果指標を設定することも考えられる。
  • 住宅における温熱環境の性能向上を、各種施策に位置付けることが必要であると考えられる。特に高齢者が居住することとなる住宅等については優先的に対策を講じることが望ましく、例えば、高齢者住宅ガイドラインへの位置付けなどが考えられる。
  • 住宅の温熱環境を改善する支援策を検討する必要があると考えられる。特に、最も支援が必要となる断熱性能が低い古い既存の木造戸建て住宅等については、水回り空間の断熱化や足元まで温めることができる暖房機器の浴室、脱衣室、トイレへの設置も含めた支援策を検討することが考えられる。
  • 公営・公社・UR賃貸住宅での対応など、地方公共団体やUR都市機構等における取り組みの強化を図ることも重要である。