
住宅における良好な温熱環境実現研究委員会
シンポジウム報告

『住宅における良好な温熱環境実現のためのシンポジウム』開催報告
住宅における良好な温熱環境の重要性を知っていただくため、平成30年7月9日に「住宅における良好な温熱環境実現のためのシンポジウム」を開催し、委員会の研究成果および提言について紹介するとともに、関連する研究動向等の講演を行いました。
シンポジウムには、関連省庁・自治体や関連する業界から400名を超える多くの方に参加いただきました。

開催概要
- (1) 開催日
- 平成30年7月9日(月)14:00~17:15
- (2) 会 場
- 経団連会館 国際会議場
- (3) 主 催
- (一財)ベターリビング
- (4) 後 援
- 国土交通省、厚生労働省、経済産業省、(独)都市再生機構、
- (5) 協 賛
- (一財)建築環境・省エネルギー機構、 (一社)住宅生産団体連合会、(一社)JBN・全国工務店協会、(一社)日本ガス協会、(一社)日本建設業連合会、(一社)日本サステナブル建築協会、(一社)不動産協会、(一社)ベターライフリフォーム協会、(一社)リビングアメニティ協会
- (6) 参加者
- 402名 (講演者、委員会関係者を含む)
ご挨拶
事務局を務めた(一財)ベターリビング 理事長の井上俊之より開会挨拶を行った後、ご来賓の方を代表して国土交通省 住宅局長 伊藤明子 様よりご挨拶をいただきました。また、閉会にあたり、「住宅における良好な温熱環境実現研究委員会」委員長を務めた一般財団法人建築環境・省エネルギー機構 理事長 村上周三 氏よりご挨拶がありました。
■開会挨拶(一財)ベターリビング 理事長 井上俊之
- 良好な温熱環境による健康への影響について、既往研究等の知見を踏まえ、健康面、さらに快適性を含めて意味があるということを真正面に据え、体系的に検討を進めていただいた。
- さらに、この課題に対して、消費者、事業者及び行政が共通の認識で取り組むことが重要であるため、各方面への「提言」も取りまとめた。
- 今後は、これらの研究成果をもとに、住宅に関係する全ての皆様がこの課題に対する取り組みを考えていただくことが重要。
■ご来賓挨拶国土交通省 住宅局長 伊藤明子 様
- 住宅の温熱環境については、これまで省エネを中心に進めているが、健康面は必ずしも十分ではなく、この研究成果やシンポジウムは意義深い。
- 住宅の温熱環境と居住者の健康について、今後は関係事業者等でさらに議論が深められ、実践されることを期待したい。
■委員長挨拶一般財団法人建築環境・省エネルギー機構 理事長 村上周三 氏
- IBECにおいても、2007年に国土交通省と連携し、健康維持増進住宅研究委員会による検討を開始。2013年には発展的に名称変更したスマートウェルネス住宅研究委員会で住宅の温熱環境に関する大規模な全国調査を実施している。
- 近年は、これまでと違った形でウェルネスに対する関心が高まりつつあり、正にベターリビング実現のため、国民の要望にどう応えるかが大変重要である。
- 本研究では、暫定温熱環境水準案をはじめ、具体的な成果を示すことができたため、今後、国民の生活の質の向上に寄与することを祈念する。
講演等の概要
(1) 調査研究成果報告
(一財)ベターリビング サステナブル居住研究センター 副センター長 村田幸隆
- 研究目的、全体像、並びに主な研究成果の概要を報告。
- 『「住宅における良好な温熱環境」の実現に係る提言』の概要を説明。
(2) 水回り設計用温熱環境暫定水準案の検討と対策普及効果の試算
慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学科 教授 伊香賀俊治 氏
- SWH推進事業調査による、冬季における水回りの温熱環境に関する知見をはじめとする既往研究を踏まえて作成した「住宅改修における水回りの設計に資する温熱環境暫定水準案」を説明。
- 住宅の良好温熱化に向けた対策の普及効果について、浴槽における溺死者数を用いた参考推計を紹介。
(3) 良好な温熱環境実現のための住宅の構工法・設備の提案
近畿大学 建築学部長 近畿大学アンチエイジングセンター 教授 岩前篤 氏
- 良好な温熱環境を実現するための構工法・設備の基本的な考え方を示すとともに、実証実験やシミュレーション結果を踏まえ、新築及び既存住宅における具体的な対策のポイント、配慮すべき点等を紹介。
(4) どのメディアをどう活用すればいい?省エネ住宅、温熱環境の浸透策
(株)リクルート住まいカンパニー SUUMO編集長 池本洋一 氏
- 一般ユーザに対して住宅の省エネや温熱環境への理解を促す手法について、リクルートによる既往の調査結果等も踏まえてポータルサイトやマスチャネルの活用の観点で講演された。
- 注文/建売・分譲/賃貸等のセグメント毎に適切な媒体の活用が重要。
- 省エネや温熱環境の意識は高まりつつあるが、商売にならないと限界がある。SUUMO等のポータルサイトの役割も重要で、一般ユーザの理解向上策についても考えたい。
(5) 住環境と循環器疾患―血圧サージのリスク
自治医科大学 内科学講座 循環器内科学部門 教授 苅尾七臣 氏
- 住環境と循環器疾患の関係性について医学の観点から講演された。
- 循環器疾患は血圧サージ(急変動)が一因となっており、寒冷はそのトリガーになりうる。特に、冬は循環器疾患による死亡が増加しており、住環境の影響も大きい。
- 特に、高齢者(動脈硬化が進行した人)ほど低温暴露影響によるリスクが大きくなる。
- 足元の温度、特に床面の温度を高く保つこと、住宅内の温度を均質にすることが重要。今回の温 熱環境水準案は暫定とは言え非常に重要。
来場者アンケート
来場者アンケートには252名の方に回答いただき、各講演とも満足度が高い結果(とても満足、満足の回答が約85%)で、建築、医療の両面からの講演で勉強になった、興味を持てた等の意見を多くいただきました。また、研究成果について、もっと内容を掘り下げて行って欲しい、講演時間が短かった、報告書について、サイトでの開示を期待している等の意見があり、本テーマについて高い関心を持っていただく結果となりました。
■アンケート回答者 252名
■回答者の業種
業種 | 回答数 (人) |
---|---|
設備・部品メーカー | 63 |
エネルギー事業者 | 47 |
住宅関連団体 | 27 |
ハウスメーカー | 26 |
省庁・自治体・公共団体等 | 18 |
工務店・リフォーム事業者 | 15 |
ディベロッパー | 15 |
設計事務所 | 9 |
総合建設業 | 8 |
その他 | 8 |
流通事業者 | 6 |
研究者 | 5 |
マスコミ | 4 |
金融・保険 | 1 |
合計 | 252 |