省エネや暖房費の節約のため、日々寒さを我慢しながら暮らしている方いませんか?
住宅の省エネについて、第一人者である坂本雄三先生に賢い住宅の省エネの考え方とその効果について教えていただきます。
住まいは断熱性の高さが重要。省エネだけでなく、快適な暮らし、そして居住者の健康にも役立つことがわかってきました。

住宅の省エネは、地球温暖化対策やエネルギー問題からも必要です。また、先の東北における震災後、家庭における電気代の負担は増加しています。省エネというと我慢してエネルギーを節約することだと考えている方も多いと思いますが、現代の省エネはそうではありません。

日々の暮らしに必要な住宅内の暖かさや涼しさ、便利な暮らしと両立させるのが現代の省エネの考え方です。その為には、住宅の壁や床・屋根・窓などの断熱性を高め、効率の高い設備機器を設置しエネルギーを有効利用することが必要です。また可能であれば太陽光発電などの自然エネルギーを活用することもよいでしょう。

日本の住宅は断熱性能が低く、冬には暖房を使っても室内が十分に暖まらない住宅が多いことが問題になっています。また、住宅内の寒さが健康に悪影響を及ぼしていると思われる事例は多く、中でも入浴中のヒートショックによる健康被害など、近年マスコミ等でも報道されるようになりました。欧米諸国では、住宅内の温熱環境と健康の関係性に着目し、健康に悪影響を及ぼす低い性能の住宅改修に行政が積極的に関与する国(例えばイギリス)もあります。
日本でも最近の研究から、住宅の断熱性を高め、暖房を適切に活用して温熱環境を改善することが居住者の健康に良い影響を与えているという証拠が明らかになってきました。
今後さらに少子高齢化が進み、医療費や介護費の問題が加速すると予想されますが、住宅内の温熱環境改善は、高齢者の健康で快適な暮らしに役立ち、支える家族の心身の負担や経済的負担、そして行政の財政負担等を和らげることにつながると考えています。

新築時には家全体の断熱性能を高め、高効率な設備を活用し家全体を暖めるとよいでしょう。既存住宅の場合は、普段の生活スペースであるリビングや、一般的に寒いと言われる浴室・脱室・トイレ等を中心にリフォームするのがよいでしょう。なお、浴室など水まわり設備の交換や住宅の耐震補強などの際は断熱性能を高めるチャンスです。しっかりとリフォーム会社の方に断熱性能向上の意向を伝えましょう。

一年を通じて、快適で健康な暮らしができることは豊かさの実感につながります。
坂本雄三(さかもと・ゆうぞう)
国立研究開発法人 建築研究所理事長、東京大学名誉教授。
専門は建築環境工学(熱と空気の数値シミュレーション、住宅・建築の省エネルギー)。国土交通省社会資本整備審議会・建築分科会・省エネルギー判断基準等小委員会委員長、経済産業省・ゼロ・エミッション・ビルの実現と展開に関する研究会委員長。著書に『省エネ・温暖化対策の処方箋』、『建築熱環境』など。