つくば建築試験研究センター
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住宅の熱環境に関与する床暖房システムと
開口部の性能およびその測定方法に関する研究


清水則夫*1

キーワード
床暖房、開口部、測定方法、省エネルギー

概要
  地球レベルでの環境問題である二酸化炭素等温室効果ガスの排出量抑制には、消費エネルギー量削減が大きな役割を果たす。1994年以降、家庭用エネルギー消費量の伸びが顕著であるため、住宅の省エネルギー化が、これらの問題解決にとっても重要とされている。住宅の省エネルギー対策は、現状の居住環境の水準を低下させることなく行う必要がある。 本論文では、住宅の省エネルギー化をはかる上で重要となる室内の熱環境に関与する部品の性能を測定する方法を実験により検討し、多くの住宅部品の性能を測定した。
第1章では、住宅での省エネルギー化の重要性と、本論文で検討する住宅部品として床暖房システムと住宅用開口部をとりあげた意義を示した。
  第2章では、床暖房システムへの供給熱量に対する室内への放熱量の比率を求める実験装置を開発し、電気と温水の床暖房システムについて測定した。その結果より、室内への放熱量の比率を、床組構成の種類によって類型化した。その他の基本的な性能である、運転開始後の昇温特性と床仕上げ材の表面温度を30℃にするのに必要な供給熱量も、この類型化にしたがって、性能を表示し比較した。
第3章では、開口部に相当する標準供試体の熱貫流率測定時の表面熱伝達抵抗を、熱負荷計算時の外壁の値とほぼ同一の状態に設定する方法を考案した。また、窓供試体の熱貫流率測定時の表面熱伝達抵抗を求める方法も提案した。測定した結果より表面熱伝達抵抗が、熱負荷計算時の外壁の値とほぼ一致していることを示した。
  第4章では、複層ガラスの熱貫流率を中央部とスペーサー部に分離して示す方法とスペーサー部の影響範囲を実験により示した。これらより、大きさと幅・高さの比率が異なる複層ガラスの熱貫流率を求める式を提案し、性能を表示した。
  第5章と第6章では、玄関ドア、窓、出窓と天窓の熱貫流率を測定した。玄関ドアは、熱貫流率に影響する大きな要素として6項目を抽出分類分けし、その各部表面温度と熱貫流率の関係を示した。窓、出窓と天窓については、部材の材質、開閉方式とガラスの種類に分類し、分類別に熱貫流率を示した。また、室内温度が標準で22℃の時、窓表面が結露する室内の相対湿度と結露水が夜間凍結する可能性を検討するチャートを示した。このチャートを使用するための窓表面の温度低下率のデータを、部材の材質、開閉方式とガラスの種類に分けて示した。
  第7章では、開口部の室内側に断熱内戸等の付属物を取り付けていることによって、開口部廻りの断熱性能が、外壁と同等近くまで向上することを示した。また、付属物を取り付けることによって、窓の室内側表面に結露する箇所が増えるが、付属物の気密性を上げることによって結露が軽減できることを示した。

*1 (財)ベターリビング筑波建築試験センター 環境性能試験室長

学位論文(工学) 1998年12月
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