第11回

50代人口の約3割に達するNISA口座。住宅ローンが残るなら、何を優先する?

「3人に1人に近い」規模を入口に、自分の家計の優先順位を考えます。

公開日:2026年9月17日

NISA住宅ローン修繕設備更新
著者エイスケ 文|エイスケ(住宅と教育の専門家)
住宅ローンと資産形成の優先順位を考える50代

50代人口は約1,845万人。それに対し、50歳代のNISA口座は約553万口座です。基準日は異なりますが、単純比較すると約30.0%。「50代の3人に1人に近い」規模で、NISAはぐっと身近なお金のテーマになっています。ただし、これは人口と口座数の比較であり、新NISAで実際に投資している人数や、2024年以降に新しく始めた人数を示すものではありません。この記事では、この身近な数字を入口に、住宅ローンや修繕費との優先順位を整理します。

1. 50代人口の約30%に達するNISA口座

総務省統計局の人口推計では、2026年2月1日現在の50〜54歳は976万0千人、55〜59歳は868万9千人で、50代人口は合計1,844万9千人です。一方、金融庁の2025年12月末調査では、50歳代のNISA口座数は553万1,813口座でした。両資料の基準日は約1か月ずれており、口座数は買付けの有無や新規開始人数を示しません。

この二つを単純に比べると、NISA口座数は50代人口の約30.0%に相当します。言い換えれば「3人に1人に近い」規模です。

この数字は、50代の口座開設規模を示すものです。個々の家計でNISAを最優先すべきことを示すものではなく、住宅ローンや修繕・設備更新費との順番は別に考えます。

2. 身近になったからこそ、家計の順番を考える

子どもの学費や習い事にかかっていたお金が一段落し、退職金や年金の輪郭も見え始める50代。同時に、住宅ローンの残高、修繕・設備更新費、老後の生活費という、これから確実にかかる支出も視野に入ってきます。手元にできた「お金の余白」を新NISAに回すべきか、住宅ローンの繰り上げ返済に充てるべきか、修繕・設備更新費として取っておくべきかは、家庭ごとに判断が必要です。

新NISA(少額投資非課税制度)は2024年に制度が拡充され、年間投資枠や非課税保有期間が広がりました。ただし、50代全体の口座規模と、「自分の家計にとって今それが最優先か」という判断は分けて考える必要があります。

周囲の利用状況は、資産形成を考え始めるきっかけにはなります。しかし、住宅ローンを返済しながらの資産形成では、ローンの金利、修繕・設備更新費、「元本割れしても取り返せる時間があるか」という年齢的な事情まで、あわせて考える必要があります。

50代人口約1,845万人とNISA口座約553万口座を比較し、口座数が人口の約30.0%に相当することを示す横棒グラフ

出典:金融庁「NISA口座の利用状況調査」/総務省統計局「人口推計」。注:基準日は異なります。口座数は実際の投資人数・新規開始人数を示しません。553万1,813口座÷1,844万9千人=約30.0%。人口は2020年国勢調査基準の確定値で、2025年国勢調査集計後に更新予定です。

3. 繰り上げ返済・投資・修繕・設備更新費を比べる前に

新NISA、住宅ローンの繰り上げ返済、生活防衛資金、修繕・設備更新費への備え。これらは性質がまったく異なるお金の置き場所です。

  • 新NISAでの投資:非課税というメリットがある一方、値動きがあり、必ず増える保証はありません。
  • 繰り上げ返済:将来支払うはずだった利息の負担を、確実に減らせます。ただし、手元資金が減ることや、住宅ローン控除を受けている期間は効果の出方が変わる点に注意が必要です。
  • 生活防衛資金:病気や失業など不測の事態に備える、すぐに引き出せるお金です。これが不足したまま投資や繰り上げ返済を進めるのは避けたいところです。
  • 修繕・設備更新費:外壁、屋根、給湯設備など、いずれ発生する費用です。金額も時期もある程度予測できます。

どれか一つが常に正しいわけではありません。また、家庭ごとの借入条件や資産状況によって優先順位は変わります。

4. 優先順位を決める前に、まず確認したい3つの数字

優先順位を決める前に、次の3つを確認しておくことをおすすめします。

① 住宅ローンの金利と残高 金利が高いほど、繰り上げ返済によって負担は小さくなります。逆に低金利で借りている場合、無理に繰り上げ返済を急ぐ必要は薄れます。金利のタイプ(変動・固定)や、今後の返済予定表を一度手元に用意しましょう。

② 生活防衛資金の有無 必要な金額は、収入の安定性、家族構成、毎月の支出によって異なります。急な支出にも対応できる手元資金があるかを、投資や繰り上げ返済より先に確認します。

③ 修繕・設備更新費の見込み 築年数や設備の状況によって、今後数年でどの程度の修繕・設備更新費がかかりそうか、大まかにでも把握しておくことが重要です。見込みが立たないまま資金を投資に回すと、いざというときに住宅ローンとは別の借り入れが必要になることもあります。

住宅ローン残高と家計を確認する様子

5. 自分の優先順位を決める

3つの数字が見えてきたら、次のような順番を一例として考えると整理しやすくなります。

  1. 生活防衛資金が不足していれば、まずそこを優先する。
  2. 住宅ローンの金利が高め、あるいは変動金利で今後の上昇が不安な場合は、繰り上げ返済も選択肢に入れる。
  3. 修繕・設備更新費の見込みが立っていない場合は、その分を別枠で確保する。
  4. そのうえで余力があれば、新NISAなど資産形成に回す。

この順番は絶対的なものではなく、家計の状況、リスクへの考え方、住宅ローン控除の残り期間などによって変わります。判断に迷う場合は、特定の金融商品を売る立場にない、独立系のファイナンシャルプランナーや、住宅金融支援機構の相談窓口など、中立な立場の専門家に相談することをおすすめします。


修繕・設備更新費と資産形成の配分を考える様子

よくある質問

NISAと住宅ローン返済は、どちらを優先すべきですか?

一律の正解はありません。住宅ローンの金利・残高、生活防衛資金、修繕・設備更新費の見込みを並べ、家計に無理がない順番を考えます。

修繕・設備更新費は、何から確認すればよいですか?

外壁や屋根の修繕時期だけでなく、給湯設備などの更新時期と概算費用を確認します。投資や繰り上げ返済の前に、必要になりそうな費用を別枠で見積もります。

生活防衛資金とは何ですか?

収入減や急な支出に備える、日常の生活費とは別の資金です。投資や繰り上げ返済を考える前に、家計で無理なく確保できる額を確認します。

繰り上げ返済をするときの注意点は?

返済期間や利息を減らせる場合がある一方、手元資金が減ります。金利、団体信用生命保険、教育費や修繕・設備更新費を含めて判断します。

家計の優先順位は、誰と話し合えばよいですか?

ローン返済や修繕・設備更新費が家計に影響する場合は、住宅ローンの返済額や修繕・設備更新費などの金額と、今後の暮らしの希望を家族で具体的に共有します。個別の資産配分や税務は、必要に応じて専門家に相談します。

50代の約30%がNISA口座を所持しているなら、投資を優先すべきですか?

この約30%は、50代人口と50歳代のNISA口座数を単純に比べた割合で、利用者の割合を示すものではありません。投資を優先すべきかどうかは、この数字だけでは判断できません。住宅ローン、生活防衛資金、修繕・設備更新費を確認して決めます。

家族と話し合おう

  1. 我が家の住宅ローンは、今どのくらいの金利・残高で、返済はいつまで続くか、家族で確認したことがありますか。
  2. 万が一の備え(生活防衛資金)は、今の家計にとって十分と言える水準にありますか。
  3. 修繕・設備更新費(外壁、屋根、給湯設備など)について、今後どのくらいの費用がかかりそうか、話し合ったことがありますか。
出典・参考資料を見る
  1. 金融庁「NISA口座の利用状況調査(2025年12月末時点、2026年7月3日公表)」。https://www.fsa.go.jp/policy/nisa/20260703.html
  2. 総務省統計局「人口推計(2026年2月1日現在、2026年7月21日公表)」50〜54歳976万0千人、55〜59歳868万9千人。2020年国勢調査基準の確定値で、2025年国勢調査の人口等基本集計公表後に更新予定。https://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/202607.pdf

※本記事は特定の金融商品・投資行動を推奨するものではありません。個別の資産配分・税務の判断は、ファイナンシャルプランナーや税理士など専門家にご相談ください。

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著者エイスケ

この記事を書いた人|エイスケ

1986年生まれ。実家の工務店・不動産に10年間従事したのち、教育の世界へ。住宅と教育、両方の視点から「豊かな暮らし」をテーマに執筆します。※本コラムは筆者個人の見解・経験に基づくものです。最終的な判断は各分野の専門家にご相談ください。