第10回

子どもが巣立ったあと、家はどう変える?──50代から考える夫婦の居場所

子どもの独立を機に、夫婦二人の暮らしへ住まいを合わせ直す考え方を紹介します。

公開日:2026年9月15日

子どもの独立夫婦の居場所寝室間取り
著者エイスケ 文|エイスケ(住宅と教育の専門家)
明るいリビングでこれからの住まいを話す50代夫婦

子どもの独立後、夫婦二人の時間が急に増えたと感じる方は多いのではないでしょうか。子育てのために整えた家は、間取りも生活のリズムも「家族みんなで過ごすこと」を前提につくられていたかもしれません。この記事では、寝室のあり方や居場所のつくり方を切り口に、夫婦二人の暮らしに家を合わせ直す考え方を紹介します。リフォームを急かすものではなく、夫婦で家のこれからを話す入口として読んでいただければと思います。

1. 子育てのためにつくった家、その後

子どもが小さかった頃、家づくりや部屋の使い方の多くは「子育てのしやすさ」を軸に決められていたのではないでしょうか。リビングを広く取り、子ども部屋を確保し、家族全員が同じ時間に同じ場所で過ごすことを前提にした間取りが自然に選ばれてきました。

子どもが独立すると、こうした前提が少しずつ崩れていきます。使われなくなった部屋、二人には広すぎるリビング、そして何より、夫婦二人だけで過ごす時間の長さが、これまでとは大きく変わります。これは家づくりが間違っていたということではなく、家が担う役割が、子育て期から夫婦二人の時期へと移り変わるタイミングを迎えたということです。

子どもの独立後に空いた部屋

2. 50代から変わる住まい方

50代になると、子育て以外にも暮らしの変化が重なってきます。定年後を見据えた働き方の変化、親の介護や通院への同行、自宅で過ごす時間そのものの増加。こうした変化は、一度にすべて起こるわけではなく、少しずつ、順番もばらばらにやってきます。

子どもの独立後は、子育てを優先してきた部屋の使い方を、夫婦二人の暮らしに合わせて見直す時期でもあります。今の家で、それぞれが落ち着ける場所と、二人で過ごす場所の両方を確保できているかを考えてみましょう。

3. 寝室を分けることも、心地よさの選択肢

夫婦二人の暮らしを考えるとき、しばしば話題になるのが「寝室を分けるかどうか」です。この話題には、「夫婦仲が悪くなったのでは」というイメージがつきまとうことがありますが、実際にはそう単純な話ではありません。

就寝・起床時間、体感温度の好み、いびきや物音など、睡眠環境への希望は人によって異なります。年齢を重ねると、就寝時間や体調に関わる希望が夫婦それぞれで変わることもあります。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、成人の健康維持において睡眠の質を確保することの重要性が示されています。寝室を分けることそのものを推奨するものではありませんが、「同じ部屋で寝ることが常に正解とは限らない」という前提に立てば、寝室のあり方を夫婦で見直すことは、関係を悪化させる選択ではなく、それぞれが快適に眠り、日中を元気に過ごすための工夫として捉えることができます。

生活リズムに合わせて寝室を分けた50代夫婦

4. それぞれの居場所と、二人の共用空間

寝室を分ける・分けないにかかわらず、大切なのは「一人になれる場所」と「二人で過ごす場所」の両方が、無理なく確保されているかという点です。

  • それぞれのパーソナルスペース:趣味の道具を広げられる場所、静かに過ごせる場所、オンラインでの用事に対応できる場所など。
  • 二人の共用空間:一緒に食事をする場所、テレビを見る場所、会話を楽しむ場所など。

これらは「別々の部屋を新設する」ことだけを意味しません。同じリビングの中でも、一人がソファで、もう一人がダイニングテーブルで、それぞれ違うことをしながら同じ空間にいる、という過ごし方も一つの形です。大切なのは、「いつも一緒」か「完全に別々」かの二択で考えるのではなく、その時々の気分や体調に応じて距離感を調整できる余白を、家の中に残しておくことです。

将来的に、子どもが家族を連れて帰省したり、一時的に親と同居したりする可能性がある場合も、今の段階からすべてを決めてしまう必要はありません。使われていない部屋を、来客や帰省にも対応できる「余白」として残しておく考え方は、第19回「家族が集まる場所は、リビングだけじゃない。成長に合わせて『つながり方』を変えられる家へ」でも詳しく取り上げます。

夫婦それぞれの居場所と共用空間があるリビング

5. まず夫婦で話してみる

住まいを見直す最初の一歩は、大掛かりなリフォームの検討ではなく、夫婦での対話です。次のような問いから始めてみるとよいかもしれません。

  • 今の寝室、居心地はどうか
  • 一人になりたいと感じる時間はあるか。そのとき、どこで過ごしているか
  • 二人で過ごす時間で、大切にしたい場面はどんなものか

すぐに答えが出なくても構いません。子育て期に「家族のための家」を作ってきたように、これからは「夫婦二人のための家」を、少しずつ作り直していく。そのための対話を、今日から始めてみませんか。


よくある質問

子どもが独立したら、すぐにリフォームが必要ですか?

すぐに工事を決める必要はありません。まずは使われなくなった部屋、眠りや生活リズム、収納の使い方を夫婦で整理し、必要なことから検討します。

寝室を分けるのは、夫婦関係に問題があるからですか?

生活時間や睡眠の質を整えるための選択肢の一つです。分ける・分けないを決める前に、互いに心地よく休める条件を話し合うことが大切です。

空いた子ども部屋は、すぐに別の用途へ変えるべきですか?

急いで決める必要はありません。家族の帰省時、収納、趣味や仕事の場など、これからの暮らしに合う使い道を考えます。

夫婦それぞれの居場所は、どのように考えればよいですか?

一人で落ち着ける場所と、一緒に過ごしたい共用空間を分けて考えます。今の家で心地よい場所・使いにくい場所を挙げるところから始めます。

大掛かりな工事の前にできることはありますか?

家具の配置、照明、収納、使われていない部屋の使い方を見直すだけでも変わる場合があります。必要な工事を絞るためにも、暮らし方の整理が先です。

空いた子ども部屋を、帰省用に残しながら日常でも使えますか?

帰省や来客に対応できる余白を残しつつ、普段は趣味や仕事の場所として使う方法があります。用途を一つに固定せず、夫婦の暮らしと将来の変化の両方を考えます。

家族と話し合おう

  1. 今の寝室の環境について、率直にどう感じていますか。
  2. 一人になりたいと感じるとき、家の中でどこで過ごしていますか。その場所は心地よいですか。
  3. これからの二人の時間で、家に残しておきたい「共用空間」はどこですか。
出典・参考資料を見る
  1. 横山彰人『夫婦をゆがめる「間取り」──あなたの家に「家族の営み」はありますか?』(PHP研究所、2004年)。https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-63589-7
  2. 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html

※本記事は一般的な住まいづくりの考え方を紹介するものであり、夫婦関係や睡眠に関する個別の悩みについては、必要に応じて専門家(カウンセラー、医療機関等)にご相談ください。

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著者エイスケ

この記事を書いた人|エイスケ

1986年生まれ。実家の工務店・不動産に10年間従事したのち、教育の世界へ。住宅と教育、両方の視点から「豊かな暮らし」をテーマに執筆します。※本コラムは筆者個人の見解・経験に基づくものです。最終的な判断は各分野の専門家にご相談ください。