■ガーデン ワンポイントアドバイス





 

ガーデンデザインの仕事をしていると、『 自然なイメージでお庭をコーディネートしたい 』という方が増えてきているように感じます。テラスやデッキといったハードな部分にナチュラルさを希望される方もいますが、ほとんどが植栽に関してのリクエストです。

そこで、今回は『ナチュラルテイスト』をテーマにしてみたいと思います。
 
 

手入れの行き届いたお庭は確かに美しいのですが、例えば同じ大きさの木や花が、同じ方向に等間隔に植えられていると、きっちりしすぎてかえって居心地が悪くなります。特に日本人は、昔から『シンメトリー(=左右対称)』よりも、少しどちらかにずれている形を美しく感じるところがあるのでなおさらです。
ガーデニングでナチュラルな雰囲気を出すためには、植栽の流れを1方向にまとめないこと。普通、植物は太陽に向かって上方に伸びていくものが多いので、そうでないものを加えると、1方向への流れが途切れて自然な感じになります。葉や枝ぶりが暴れるように茂るタイプのプランツや、横や下方向に伸びていくプランツを積極的に取り入れましょう。

 

■ツルニチニチソウ■
暴れんぼうのプランツたちの中でお薦めなのは、オーソドックスなところでは「ツルニチニチソウ」や「アイビー」があります。
 
両方とも単純な伸び方ではなく、さまざまな方向に自由に伸びていきます。また茎の部分が細く長いので、風が吹いて揺れるなど、とても自然な風合いを醸し出します。主役となる花の間に上手に植えこむと、全体にナチュラルテイストにまとまります。
 
 

■アスパラスプレンゲリー■

シンプルなポットに入れて飾っても、十分見ごたえがあります。 夏には、細かい葉の集合体はやさしい涼しさも運んでくれます。

もう1つ、ナチュラルテイストに加えてほしいもの…今回特に私がお薦めするのは、「アスパラスプレンゲリー」というプランツです。
 
野菜のアスパラガスの仲間ですが、茎の部分がとても細く群生します。茎は長く伸びて下垂し、80cmから100cmくらいまで成長します。花壇に植えこめばボリューム感が出るし、乾燥にも比較的強いのでコンテナ植えにもぴったり。また常緑なので、冬の花壇が寂しくなることもありません。

主役となる花類のボリュームが足りない時でも、ふんわりしたテクスチャーが花壇全体をみずみずしいグリーンでいっぱいにしてくれます。地下の根茎で繁殖するので、とても速く増えるのもメリットの1つ。ポットから出して2つぐらいに分けて植えても、すぐに大株になってくれます。小さな花が初夏に少しだけ咲き、秋に赤い実をつけることもあります。葉の間からほんの少しだけ見えるその実は、なかなか可愛らしいものです。
 
基本的に、日当たりの良い場所を好みます。いくら乾燥には強いとはいえ、水切れが続くと葉が黄色く変色してパラパラと落ちてしまうので、水やりは気を付けてください。
 


■アスパラスプレンゲリーのコーディネイト例■

前回の「ステキなお庭を訪ねる。」でご紹介したお庭にも「アスパラスプレンゲリー」を使っています。
積みレンガのオブジェから自然な感じに垂れているのは、斑(ふ)入りの「アイビー」。 その下の花壇は「アスパラスプレンゲリー」、「アイビー」、「ゼラニウム」、「アガパンサス」があふれるように植えられ、初夏を彩ります。「アスパラスプレンゲリー」がボリュームアップに一役買っている好例だと思います。
 

 
 
 


 

 
植物に対する好みというのは実にさまざまで、お庭に多種多様のスタイルがあるのも、それだけ、施主の好みを反映しているということかもしれません。 K邸は、植物を心から愛して育てることに生きがいを持っていらっしゃる方が施主であるせいか、四季を通じて植栽に変化があり、全く違う趣を感じさせてくれるお庭です。

■デザイン後のお庭■

私が、お庭のデザインのために初めてお庭を訪れた時は、古くからある柿、カリン、梅などの落葉樹がスモールガーデンを温かく包んでいました。芝生こそやや弱っていたものの、新築のお庭にありがちな殺伐とした空気はまったく感じられません。

■初夏のK邸ガーデン■
そのため、まず考えたことは、私が新しく入れこむもの=「デザイン」と、このお庭の雰囲気がうまく混ざり合うように一体感をもたせるということでした。
 
アプローチはテラスと同じレンガを使用。レンガの間隔を少しあけてアクセントにしているので、遊び心が感じられると思います。
 
また、花壇は施主が思う存分腕を振るえるよう、やはり同じレンガで枠組みを造りました。
四季折々の花がレンガにかかってナチュラルに見えるように、いつも工夫して植えていらっしゃると聞き、とても嬉しく感じています。



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