一般財団法人ベターリビング(以下、BL)は、小規模な建築物を対象とした地盤の液状化対策審査業務、並びに地盤の液状化対策保証業務を開始します。
1.背景と目的
○ 小規模な建築物における液状化対策は、東日本大震災における液状化による被害等を受けて、改めてその対策への必要性が叫ばれているにもかかわらず、実工事への普及は進んでおりません。
○ 個々の建築物の液状化対策工事について、第三者による評価の仕組みが整備されておらず、関係者(地盤の液状化対策にかかる工法の開発者・所有者あるいは工事施工者等)が、それぞれ個別に有用性を主張していますが、住宅供給者あるいは消費者たる住宅発注者(居住者)に対する客観的な説明力を持つには至らず、採用が進んでいない状況となっています。
○ また、実際の地震発生を待たなければ、評価を行うにあたって必要な知見を得るための事例が収集出来ないため、これまで十分な知見が得られてなく、地盤の液状化対策に係る評価については、体系的な取り組みがなされてきませんでした。
○ さらに、局所的な液状化をも生じさせない万全の液状化対策を施すことは過剰対策となる嫌いがある一方、経済合理性を加味し適切な対策を行った場合に、液状化が生じる可能性を完全に否定することはできません。
○ こうした背景のもと、消費者の保護を目的に、中立的な第三者機関であるBLにおいて、液状化対策に関する審査基準を策定し、個々の建築物における液状化対策を総合的に審査する業務を開始いたします。
○ 万が一BLが審査した建物に、地震に伴う液状化によって傾斜が生じた場合、その傾斜修正を保証する業務をあわせて実施します。
2.審査業務の概要
(1)審査内容
1)地盤液状化対策工法
※の事前確認等
個別建築物の審査に先立ち、実施が見込まれる液状化対策工法を事前に確認・評価します。事前確認等の対象は、以下のa)もしくはb)のいずれかに該当するものとします。
a)公的機関による認定・評定等を取得しており、本業務の審査基準を満足するものとBLが確認した工法
b)BLの建設技術審査証明を取得している工法
※ 本業務において地盤液状化対策工法とは、地盤が液状化した場合であっても杭や柱状地盤改良体を介して地盤が建物を支える力を確保するものと、液状化抑止工法を採用することにより地盤の液状化を発生させないものの2つを対象としています。
2)個別建築物の液状化対策の審査
実施する液状化対策が、BLが定める審査基準に適合するか否かについて、個別建築物ごとに審査します。主な審査項目は以下のとおりです。
①地盤調査方法、②液状化判定方法、③液状化対策に係る設計内容、④液状化対策に係る施工記録、⑤地盤改良体の品質
(2)対象建築物
○ 延べ床面積が1,000m2以下の建築物
○ 用途及び構造種別については制限なし
(3)申請者
申請者は建築物の売主及び建築物の建設工事の請負人若しくは、液状化対策工事の施工者(改良業者)といたします。
(4)審査報告書
審査内容については、申請者宛に審査結果をまとめた審査報告書を発行します。
3.保証業務の概要
(1)保証の内容
震度5弱から震度5強の地震により、地盤が液状化し、建物の傾斜増分が5/1,000以上となった場合、建築物の傾斜修正を保証いたします。
※ 本業務における保証は、被保証者に対し、傾斜修正という役務の実施を保証するものです。(発生した損害に応じて金銭を支払うものではなく、保険業法に基づく保険業にはあたりません。)
(2)保証対象建築物
審査により液状化対策の適合性が認められた建築物
(3)保証の申請と共同保証
保証を付与する場合は、審査業務の申請と同時に保証申請を行っていただくこととします。申請者はBLと共同で傾斜補正を行う共同保証者となります。
BLは、予め定めた負担ルールにより、当該修正工事費の一部を負担します。また、BLは、損害保険ジャパン日本興亜株式会社と本業務に係る保険契約を締結し、保証費用の補填を受けることとしています。
なお、改良業者が保証申請者の時は、①建築物の売買契約による場合、売主に共同保証者となっていただきます。②建設工事の請負契約による場合、請負人に共同保証者となっていただきます。
4.審査・保証対象工法の紹介
○ BLが本審査・保証業務の対象として、すでに2.(1)1)について事前に確認・評価した工法として、以下のものがあります。
会社名 |
工法名称 |
審査証明番号 |
積水ハウス株式会社 |
SHEAD工法 (格子状の地盤改良体を築造し、地震時における地盤のせん断変形を抑制する効果により、 地盤の液状化を抑制する工法) |
BL審査証明-025 |
5.事例の蓄積による液状化対策の効果検証について
○ BLでは、液状化対策の施工者等の協力の元、震災発生時に液状化発生地域の現地調査を行い、対策の効果等の確認を進めてまいります。
○ この結果を今後、審査基準へフィードバックするとともに、より一層信頼性及び経済合理性の高い審査基準の策定・工法の開発につなげて行くことで、液状化対策の更なる普及促進及び液状化による建物被害の抑制に貢献できるものと考えます。
地盤の液状化対策に係る参考情報
① 地盤の液状化対策工法
地盤の液状化対策工法については、例えば次のような工法がある。
液状化抑止工法(格子状地盤改良工法)の概要図
② 地盤の液状化対策の実施状況
地盤の液状化対策については、まだ広く取り組まれている状況にない。例えば、平成25年度創設の宅地液状化防止事業(宅地耐震化推進事業(都市防災推進事業))の活用実績は8地区(平成29年3月時点)で、いずれも熊本地震の被災地で実施されるものであり、一般的な予防対策として実施されているものはない。
③ 地盤の液状化に係る品確法に基づく情報提供の仕組みの利用状況
地盤の液状化に係る品確法に基づく情報提供の仕組み
※が始まっており、住宅性能評価書において地盤の液状化に関し何らかの情報提供がなされているものの割合は、戸建て住宅で約3割、共同住宅で約5割程度となっているが、
地盤の液状化対策を実施した旨及びその内容を記載したものはごくわずかにとどまっている。
※ 品確法施行規則第1条第十一号に基づき、住宅性能評価を行った住宅の地盤の液状化に関し住宅性能評価の際に入手した事項のうち参考となるものを、住宅性能評価書に記載できることとなっている。(平成27年4月1日施行)