■サステナビリティー(持続性)とは、何で測ればよいのでしょう?


 サステナビリティーと関連を有すると思われる既存の指標をいくつか例示してみますと、次のような指標が知られています。

ファクターX

 資源生産性(資源の投入量当たりの財・サービスの生産量)を高める、逆にいうと、同一の財やサービスを得るために必要な資源やエネルギーの投入を低減するための指標として提唱されるもの。「X」には、環境効率の倍率を表す数字が入る。
 1991年にドイツのヴッパタール研究所(当時)のシュミット=ブレークが提唱したファクター10、1992年にローマクラブが提唱したファクター4が有名。それぞれ、環境効率を4倍・10倍に高めることで、資源生産性の向上と環境負荷軽減を図り、持続可能な社会を実現することを目標としている。

エコロジカル・フットプリント

人間活動により消費される資源量を分析・評価する手法のひとつで、人間1人が持続可能な生活を送るのに必要な生産可能な土地面積(水産資源の利用を含めて計算する場合は陸水面積となる)として表わされる。
 例えば、あるエコロジカル・フットプリントでは、1)化石燃料の消費によって排出される二酸化炭素を吸収するために必要な森林面積、2)道路、建築物等に使われる土地面積、3)食糧の生産に必要な土地面積、4)紙、木材等の生産に必要な土地面積、を合計した値として計算される。この場合、アメリカで人間1人が必要とする生産可能な土地面積は5.1ha、カナダでは4.3ha、日本2.3ha、インド0.4ha、世界平均1.8haとなり、先進国の資源の過剰消費の実態を示すものである。
 これは人間が地球環境に及ぼす影響の大きさとみることもできることから、エコロジカル・フットプリントつまり「地球の自然生態系を踏みつけた足跡(または、その大きさ)」と呼んでいる。

ウッドマイレージ

 1994年に英国の消費者運動家ティム・ラング氏が提唱したFood Miles(日本では「フードマイレージ」という表記をとる)を木材に応用した指標であり、木材の量と木材の産地と消費地まで輸送距離を乗じたものである。
 日本の木材に対する自給率は18.2%と低く、南米、アフリカ、欧州、オセアニアといった、8,000キロメートル以上離れた輸出国から輸入する割合が40%と非常に高い。結果として日本のウッドマイレージは384億キロメートルで、米国の4.6倍、ドイツの21倍にもなる。輸送過程の二酸化炭素排出量(ウッドマイレージCO2)を計る研究や、認証制度の試みも始められている。

環境危機時計

 環境危機時計は、旭硝子財団が毎年実施しているアンケート「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」の回答により、環境問題による人類存続への危機意識の程度を時計の針にたとえて表示したものである。
 同アンケートは1992年を第1回として始まり、世界各国の環境問題の有識者に対して行なっている。第15回(2006年)には、3989人中655人(16.4%)から回答があった。
 環境危機時計は、以下の目安による回答を集計したものである。
0:01〜3:00 ⇒「ほとんど不安はない」 3:01〜6:00 ⇒「少し不安」 6:01〜9:00 ⇒「かなり不安」  9:01〜12:00 ⇒「極めて不安」

国民総幸福量

 経済成長だけでなく国民の幸福量を「豊かさ」の指標と見なすべきとして、1980年代にブータン国王ジグメ・シンゲ・ワンチュクが提唱した概念。1998年の国連開発計画(UNDP)のアジア太平洋地域会議において、当時のブータン王国首相ジグミ・ティンレイが、先進国の経済開発による成長に疑問を投げかけたことから注目されるようになった。
 指標は「持続可能で公平な社会経済開発」「自然環境の保護」「有形、無形文化財の保護」「よい統治」の4つから構成されおり、ブータン王国はGNHの向上を国家の最終目標としている。


 わが国の社会全体の住まいと暮らしということですので、単一の指標では、表わしきれないのかもしれません。その場合は、複数の指標を組み合わせたチャートによるのかもしれません。

 フレッシュな研究者の方々から多彩なアイディアが寄せられることを期待しております。