第2話 エコジョーズの技術って結構すごいんだ!

コラムの登場人物

エネオくんの実家で長い間使っていた給湯機が故障し、お湯が出なくなった。ユウさんに相談し最新の高効率給湯機(エコジョーズ)に交換した。エコジョーズは、給湯熱効率が95%であり、従来型のガス給湯機と比べて、ガス使用量も二酸化炭素(CO2)排出量も従来型よりそれぞれ約14%カットできる、環境と家計にやさしい燃焼機器(注1)。既に1,000万台以上が使われている。今まで使っていた給湯機と同じ場所にそのまま簡単に取付けられるメリットもある。ガス代も相当安くなりそう。エネオくんはお礼のためユウさんを訪ね、話題は自ずとエコジョーズの燃焼の話になった(注2)。

エネオくんイメージ

エネオくん:エコジョーズって排気ガス温度が相当に低いですね。

ユウさんイメージ

ユウさん:今までの給湯機の排気ガスは200℃くらいあった。でもエコジョーズは、燃焼熱と燃焼で生じる水蒸気の多くを回収できるので50℃近くにまで排気ガス温度を下げられる。熱効率が極めて高い機器の証だよね。

エネオくんイメージ

エネオくん:エコジョーズは運転音も静かで、一見、熱効率が高い最新機器とは分からないですね。

ユウさんイメージ

ユウさん:今のエコジョーズは、当たり前のように安定した「良い燃焼」を保ち続ける。これは、先人達が様々な困難を克服する中で開発し蓄積してきた、信頼できる高度な技術のおかげだ。「良い燃焼」には空気・ガスを適切に混合して燃やすバーナーの設計やガス制御が必要だ。
ガスと空気を燃やすと二酸化炭素(CO2)と水蒸気が発生する。化学式では簡単だね。だけど実際には、余剰空気をかなり必要とするし、燃焼に伴って一酸化炭素(CO)や空気中の窒素が反応した窒素酸化物(NOx)も微量に発生する。でも、環境への影響が生じないよう厳しい燃焼基準をクリアしているんだ。

エネオくんイメージ

エネオくん:排気ガスの環境への影響も考えられているんですね。

ユウさんイメージ

ユウさん:そうだね。さらに、ガスの成分によって燃焼設計はかなり変わる。都市ガスの主成分である天然ガスは元々環境に極めてやさしいガスだ(注3)。でも付臭剤として硫黄などが微量含まれることもある。今までの給湯機は熱交換器に結露が発生しないようにしていた。それは、燃焼で生じる水蒸気や微量な硫黄、NOxなどの成分が結露発生で硝酸や硫酸を生じさせ、熱交換性能や寿命に影響を与えるおそれがあったからだ。だから材料選定に苦労し、排気温度は200℃くらいにしていた。
でも、エコジョーズは二次熱交換器で燃焼で生じる水蒸気から排熱をとことん回収する設計とした。強い酸性になる結露水でも腐食が起こらない丈夫な材料を選んでいる。瞬間給湯機はその長所であるコンパクト化を推進し、熱交換器の大きさや熱交換性能も工夫してきた。燃焼ガスが熱交換器の狭いところを流れる間に、素早く、効率良く熱交換できる。結露は素早く落下させ熱交換性能を助ける仕組みになっている(注4)。
排気ガスは温度が低く酸性だ。でも、エコジョーズの排気ガス量は従来型より少ない上に燃焼基準もクリアしている。空気中に逸散されても何ら環境に影響を与えるような量ではない。安心していい。

エネオくんイメージ

エネオくん:見えないところで様々な技術が生きているんですね。

ユウさんイメージ

ユウさん:今でも燃焼機器技術の研究開発や工夫は地道だけど着実に続けられている。何千万台も設置されて来た給湯機を故障などで取り換える時に、機器がコンパクトであることは大きなメリットなんだ。エコジョーズのコンパクト化は日々工夫を重ね一層進んでいる。だからエネオくんの実家のような隣家との間の狭い場所にも容易に取り付けられ、瞬間式のメリットが活かせたね。

エネオくんイメージ

エネオくん:エコジョーズの燃焼技術開発で熱効率を100%以上にすることはできませんか?

ユウさんイメージ

ユウさん:今のエコジョーズのようにコンパクトにひとつにまとまった燃焼機器では残念ながら実現できていない。燃焼中心に少し説明するね。一般的に40℃のお湯が欲しいとする。その時、ガスを燃やして水を温める。40℃の湯を得るためには熱交換器も40℃以上になる。でも周りの空気は冬5℃とか10℃(夏でも40℃を超えることはほとんどない)。機器本体も周りの空気温度に近い。そこには温度差がある。お湯を40℃に保たなければならないので、この温度差がロス(熱損失)となる。ロスを極力小さくする工夫をしているけど、今のところ全てなくすには至っていない。
一方で、コンパクトなエコジョーズと空気熱をくみ上げるヒートポンプの特徴を組み合わせたハイブリッド(複合型)機器が既に販売されているよ。住宅のカーボンニュートラルの実現に向けて、設置に必要な空間の制約や、世帯あたりの給湯需要への対応に向けてさらなる技術開発が期待されているんだ。

エコジョーズの仕組み
図 エコジョーズの仕組み;限られたスペースの中で熱交換を繰り返し行い最大限の熱効率を得るため工夫されている

(注1)エコジョーズに関するデータ:「ガス高効率給湯器エコジョーズ」(一般社団法人日本ガス石油機器工業会ウェブサイト)より。
(注2)エコジョーズの特長をご理解いただくために「暮らしを変えたガスとお湯の物語」:5~6頁をお読みください。
(注3)天然ガスの特長は「天然ガスの特徴・種類」(一般社団法人日本ガス協会ウェブサイト)を参考にしてください。
(注4)エコジョーズの開発については「ガスとお湯の50年」184~185頁の「エコジョーズの登場」をお読みください。