■はじめてのガーデニング
ガーデニング初心者を対象に、すぐに役立つ実践的なアドバイスをテーマごとにまとめていきます。また専門用語についても、できるだけわかりやすく説明していきたいと考えています。
■第6回■
寄せ植えに挑戦!【5】 −ハンギングバスケット−
ヨーロッパのカフェやパブの窓辺を飾るハンギングバスケット。花が生きていくのにこれ以上のスモールスペースはないと思うのですが、土や水がたっぷりの花壇以上に花があふれんばかりに咲き、長い間楽しめるものです。
ハンギングバスケットの特徴は大きく2つ。植物にまんべんなく太陽の光が当たるため、いったん根つけば花がたくさんついて長持ちすることと、風通しがよいので植物が蒸れる心配が少ないこと(=葉が落ちるようなことは比較的少ない)があげられます。
また、高いところに吊るすことが多く、花壇よりも視線が上になるため、下垂する種類の植物を上手に使えば、ポットに植えた時よりその花の特徴が十分楽しめるのがよいですね。
反面、陽が当たり風通しがよいというのは、乾燥しやすいということでもあります。水切れはハンギングバスケットにとって決定的なダメージを与えるので、水遣りを怠らないことと、乾燥に極端に弱い植物は植え込まないことが大切です。
英国のパブなどで見られるハンギングバスケットは、専門のリース業者が定期的に取り替えに来るところが多いそうです。美しい状態を維持するためには「付きっきり」とは言わないまでも、こまめなメンテナンスが必要だということがわかります。
今回は、ハンギングバスケットのつくり方を中心にお話します。
ハンギングのつくり方
お薦めの花苗
■イギリスのパブにて■
インパチェンス(ニチニチソウ)のバスケットだけで壁を飾り、統一感のある寄せ植えです。
ハンギングをつくるのに必要なものと
初心者でも簡単にできるつくり方を紹介します。
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ハンギングバスケット
上から吊るして使うタイプと、壁掛け用のタイプがあります。
上から吊るすタイプは、どこから見ても均等に花が見えるように植え込みます(真ん丸のクス球状が理想です)。
壁掛けタイプは、壁に当る部分が垂直になっているので、上から見ると半円形にみえるはずです。初心者は、壁掛けのタイプで挑戦する方がやさしいと思います。
ハンギングバスケットは、この写真以外にも様々な素材・形状のものがあり、使い勝手もいろいろです。購入の際には、お店の人に相談してみるとよいでしょう。
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写真協力/ガーデンアシスト
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植え込み用マット
バスケットから土がこぼれないようにする「専用マット」。バスケットを購入する際にそれに合ったマットは大体ついてきますが、慣れてくると、好みや技量によってさまざまな種類のマットを使い分けるようになります。
マットの代わりに椰子の幹皮やモス(=苔。バスケット用にシート状になったものもあります)を使う場合も。モスは見た目は素敵なのですが、初心者には扱いにくい点もあるので、ハンギングにぴったり合った、専用のスポンジ状のマットがお薦めです。
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土
土はハンギング専用のものを使います。それには、乾燥防止のピートモスや、水はけをよくしたり軽量化のためのバーミキュライト、黒土などが適量、混ざっています。全体の重さをできるだけ軽くしたいので、バスケットが大きい場合には、底の部分にパミスか赤玉の大粒のもの、
(詳しくは、「土について」をご参照ください)
を入れます。
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肥料
植え付けの時に、緩効性化成肥料を混ぜ込んでおけば大丈夫です。
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花苗
ハンギングバスケットの場合、花がたくさんつく種類の一年草をメインにします。まだ花があまり咲いていない小さい株で、これからつぼみをもつような苗を選びましょう。植え込む時に作業が楽になります。生け花ではないので、バスケットに植えた時が「完成!」ではなく、育てて花が満開になって初めてバスケットが完成するように考えて植え込みましょう。また極端に乾燥に弱いものは避けてください。
■ハンギングの例■
必要なものが準備できたら、さっそくオリジナルのハンギングづくりに挑戦してみましょう!
専用マットをバスケットの内側にセットします。
外側から、植えたい花の数だけハサミで切り込みを入れます。
花苗が育った時をイメージしながら、左右・上下が重ならないようバランスをよく考え、切る場所を決めてください(左図の切り込みは一例です)。
一番下の切り込みの2〜3cm下まで土を入れます。バスケットは、底が丸く安定感がないので、バケツや大きめのポットの上に載せて作業を行います。
バスケットの下の部分から花苗を入れていきます。
まずは、花苗をビニルポットから取り出します。根がぎゅっと固く巻きついていたら丁寧にほぐしましょう。
ビニルポットは捨てずに、底部分をハサミで切り取り、縦に切り込みを入れて扇型に伸ばします。それで花苗の根を覆うように…イメージとしては「手巻き寿司」をつくる要領で巻き、苗をマットの切り込みから挿し込みます。
※ビニルポットを使うのは、植え込みの際に根を傷めないように植え込むため。根を傷めてしまうと上手に根付かず、育ちません。
同じ高さの切り込み部分に、花苗を全部挿し込んだら、根に巻いたビニルポットを取り外し、次の高さの切り込みの2〜3cm下まで土を入れます。
あとは、苗を挿し込み、次の挿し込み口の2〜3cm下の高さまで土を入れるという作業を繰り返します。
トップの部分は普通に寄せ植えを作るように植えます。
完全に上部まで植えたら、割り箸で株の周りの土を上下して奥の方まで土が行き渡るようにします。
最初はスポンジが見えるぐらいでOK。そのうち苗が成長すれば、半円状のきれいなハンギングバスケットになります。
>>> メンテナンス
■POINT・1・
水はたっぷり与えましょう。夏なら、庭木と同じように朝と夕方の涼しいうちに1日2回の水遣りは欠かせません。水切れ防止のために、顆粒で水を含むとゼリー状になり、保湿効果がある補助用土もあるのですが、それほど一般的でないため、ハンギング用の用土を使えば十分です。
■POINT・2・
ハンギングに適している苗は、花がいっぱいつく傾向にある一年草がメインです。できるだけ長く楽しめるようにメンテしたら、次の年には、土・花苗共に入れ替えること。理由は、土はそれほど大量に使わないということと、ハンギングの場合は土の成分が流れ出やすいため、最初の成分と割合がかなり変わってしまうからです。
最後に、ハンギングに適した花苗を
ご紹介しましょう。
ロベリア、ペチュニア、ビオラなどは花が咲く期間が長く、初心者向けの花苗です。花だけをクス球のようにアレンジしても良いのですが、垂れる感じのアイビーなどをあしらっても、雰囲気が変わります。
■ペチュニアの寄せ植え例■
写真は匍匐性の種類のペチュニアを使用したハンギングの例です。クス球はかわいらしい感じに仕上がりますが、これはとてもゴージャスに見えますよね。
(紫)ロベリア
(ピンク)ゼラニウム
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ロベリア
キキョウ科の一年草。秋に種をまけば、翌年の4月〜7月の上旬ぐらいまで咲き続ける。濃い紫がメインの色だが、近年は白や薄いピンクなどさまざまな花色のものがでてきた。水はけのよい土壌と日当たりのよい場所で育てる。ハンギングの場合はあまり暑すぎると株が弱るので、風通しのよい直射を避けた場所におくと花が長持ちする。苗から育てる場合は4月に植え付けをする。花が終わっても、茎や葉が伸びてくるようだったら、切り戻しをすれば初秋にもう一度、花が咲く。
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ペチュニア
初心者でも簡単に栽培でき、丈夫で育てやすい。ナス科の悲耐寒性(寒さに弱い)一年草。多湿に弱く、雨に打たれると花びらが傷つきやすいので、雨には当てないように注意する。また、シミの出た花は早めに摘み取る。花を次々と咲かせるためには、液肥を絶えず施すこと。
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ビオラ
スミレ科。耐寒性の一年草。花色が実に多い。11月に小さい株を植えつければ、5月ぐらいまで咲き続ける。長く楽しむコツは、花柄摘みをこまめにすること。冬場を越すときの注意は、水遣りの時間で凍えてしまわないように、昼間にたっぷりと水遣りして夕方にはしないこと。パンジーよりやや日陰でも十分育つ。
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インパチェンス(ニチニチソウ)
ツリフネソウ科。半日陰でもよく育つ。次々と花を咲かせ花期も長い。春まきの1年草。高温には強いが乾燥に弱く、夏の直射日光でぐったりとしてしまうことがあるので要注意。水遣りを怠らず、肥料は緩効性化成肥料を施す。
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