性能評価の現場

「実物の目視」再現

厳しいプロの目で検査されチェックシートに書き込まれます

 このように4回にわたって現場検査が行われるわけですが、「実物の目視」は評価員のプロの目で現場を見てチェック、また「実物の計測」は巻き尺などを対象箇所に当てて計測します。
 普段は黙々と検査を進めていく評価員のAさんですが、どのような点を念頭におきながら作業を進めていくのであろうか。
 そこで、完了検査のときにAさんの後について説明を受けました。その模様をここで再現してみたいと思います。

 《1階和室》
和室押入に使われている
合板をチェック
庇の出寸法を測り
日射取得量を確認
 まず開口部ですが、光・視環境の項目で3回目にチェックしたものが正確に施工されているか確認。また、庇の出寸法を測り日射取得量などをみます。換気対策ではこの部屋に機械換気による通気口が設置されてありますので、通気口がしっかりと施工されているかを確認します。
 この和室の押入の棚には合板が使われています。この住宅の空気環境・ホルムアルデヒド対策の等級が最上級の4ですから、この合板の品質をこのあと納品書、試験報告書などの書面で確認させてもらいます。

 《キッチン》
ドア下の通気が大丈夫か
メジャーで計測し確認
 天井に設置されている機械換気装置の施工状況を確認。廊下、ランドリーへのドアの下が通気できるようになっているかを確認します。

 《1階トイレ》
 ここも空気環境に関するチェックになります。設計住宅性能評価の時は、トイレに換気窓と換気扇が設置される設計になっていました。その後、変更がありまして換気扇の設置が中止になったので、その確認です。
 換気扇が中止になってもここでは等級4の評価に関係ありません。ですが、建設住宅性能評価の段階で変更になったことをチェックしておかなければなりません。

 《浴室》
  劣化軽減の等級が3ですから、湿気対策をみます。それに対応したユニットバスが採用されていますから、問題はありません。このユニットバスには高齢者配慮の手摺りが設置されています。
 この建物は高齢者配慮の等級が1ですから、手摺りがなくても問題はないのですが、最近のユニットバスは標準仕様でこうした対策が施されている製品が多くなっています。

 《水回り付近の廊下》
吸気・排気口がしっかり
設置されているかを確認
 この廊下の外壁に機械換気装置にダクトで繋がっている吸気・排気口が設置されており、その確認をします。

 《階段》
 階段のチェックは高齢者配慮になります。この建物は等級1ですから建築基準法のレベルで、蹴上げ、踏み面の幅を実測するだけに留まります。等級は1ですが、この階段には手摺りがしっかりと設置されています。
 この階段だけでなく、この建物は等級1以上の高齢者配慮がいろいろなところにされています。ですから、もう少し頑張ってもらえれば等級が上がります。もったいないですね。
 ――このようなかたちで、検査が進められ検査確認シートにチェックや書き込みがされていきました。


品質が特定できる認定書、試験報告書なども厳密に審査します
 現場検査がひととおり終了すると、書面の審査に移り「施工図書の確認」が行われます。ここでもAさんの説明を聞かせてもらいました。

 この住宅は高齢者配慮については建築基準法レベルの等級1なので、それほどチェック項目はありません。ですが、空気環境・ホルムアルデヒド対策は等級4であるため、かなりチェックが厳しくなります。
 和室の畳についてはチェック対象外ですが、畳の下の構造用合板は対象になります。また、先に触れた押入の棚に使われている合板も同様です。
 どちらの合板もメーカーから発行された認定書があり「低ホルムアルデヒド」の製品が使われています。しかし、これだけでは等級4の認定ができないんです。等級4のホルムアルデヒド放散量は、JIS規格でE0、JAS規格でFc0と定められているからです。低ホルムアルデヒドという認定だけではE0、Fc0なのかE1、Fc1なのか特定できないからなんです。
 合板メーカーからこの合板の試験報告書を提出してもらい、それを確認させてもらう必要がありますね。
 次に、フローリング材ですが、ここでも納品書は揃っていますが試験報告書がありません。
 キッチンセットは品質が特定できる証明書、そこに記載されている品番と現場に設置されているシールの品番が一致し、性能が確認できたのでOKです。
 最後が建具ですが、ドア枠、巾木などはしっかりと施工されています。しかし、納品書も証明書も揃っているのでOKなのですが、両方とも納品先である施工業者の宛名が記載されていません。
 そのため、この建具がここの現場に使われたことが証明できないため、再度宛名の入ったものを購入先から再発行してもらう必要があります。
 ――このようなやりとりのなかで「施工図書の確認」が進められ、Aさんの指摘や要望事項をカーボン紙の報告書に記載し、Aさんと現場監督さん両名が署名。完了検査が終了しました。懸案の書類は揃いしだいAさんに郵送、それを確認して建設住宅性能評価書が交付されることになりました。