なぜ血圧管理が必要なのか

<背景>

髙橋 龍太郎

医療法人財団 充会
上川病院 院長

元地方独立行政法人
東京都健康長寿医療センター
副所長

Alan Deverさんという方が、私たち人の死にどんな要因がどのくらい影響しているかを計算して発表しています。それによると、当然ながら医療・保健も関与しますが、43%ともっとも大きな要因は行動や生活様式であることが判りました。この中には食事や運動などの生活習慣も含まれますが、生活環境も重要なものです。この生活環境の中でも温熱環境が私たちの健康に重大な結果をもたらすことがあります。


人の死亡にかかわる原因 (Alan Dever G.E.,1991)

我が国では冬期の死亡者数が増える

人が死亡する原因は病気や事故などさまざまですが、病気で亡くなる方が圧倒的に多く、ほとんどの場合、病院を含め室内で亡くなります。また、死亡者数は毎月同じではなく季節変動をしていて、気候のよい6月9月に少なく、12月1月に多いというパターンを毎年示しており、その差は3割にものぼります。冬に亡くなる方が多いということで、我々の健康の最終的な引き金に環境温度が関係するのではないかと推測されます。
 なお、WHO(世界保健機関)では、住宅内に居住していても、気温の変化が室温の変化を生み大きな健康問題を引き起こすことから、最小室温として18℃、影響を受けやすい高齢者や子供では20℃を推奨しています。

<血圧の重要性>

死因に寄与する原因

死亡に関与する一番の要因は喫煙ですが、次に大きく関与するのが高血圧です。血圧は年を重ねるとともに高くなり、心・脳血管疾患のもっとも重大なリスクになります。血圧は寒さの影響を非常に受けやすく、一般的に外気温が下がると最高血圧(収縮期血圧)があがります。  また、厚生労働省が行った調査(平成25年国民生活基礎調査)によると男性では要介護状態になる主な要因が脳血管疾患であることもわかっています。
血圧があまりにも高い状態が続くことは危険ですが、一方で、高齢者では数分間という短時間に急降下することも危険につながることが多いのです。血圧の急降下は、食事後、起立後、排泄後、入浴中に起こりやすいことがわかっています。冬に高齢者の入浴中突然死が多く発生し問題になっていますが、血圧の急低下による健康被害の典型例(ヒートショック)であると考えています。急激な血圧降下の症状には、めまい、ふらつき、意識障害、失神があります。

健康日本21(第2次)の目標値
収縮期血圧を10年間で4mmHg低下させる

心・脳血管疾患が発生する重大なリスク要因は①高齢になる②男性である③高血圧であるという3つです。年齢や性別を変えることは不可能ですが、血圧は生活環境、生活習慣の見直しや適切に薬を服用することでコントロールが可能です。血圧の維持管理は健康維持に大きな影響を及ぼします。日々の食事・運動などの生活習慣の改善とともに、特に高齢期には冬場の住宅内を暖かく保つことが血圧の維持管理に有効であると言えます。 なお今回の実証実験では、冬場の住宅内の温熱環境が改善し、リフォーム工事1年後の最高血圧(収縮期血圧)が4㎜Hg低下する(協力者52人の平均値)という結果がえられました。これは厚生労働省がすすめる国民健康づくり運動「健康日本21(第二次)」で最重要指標に指定された最高血圧(収縮期血圧)の改善目標値(4㎜Hg低下)に一致し、大きな効果であったと言えます。

※高血圧症とは

日本高血圧学会によると高血圧症とは、最高血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上または最低血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上になる病気です。高血圧症は、日本人の三大死因のうちの二大疾患である脳卒中や心臓病など、生命に関わる病気を引き起こす最も主要な原因となっています。


監修:医療法人社団 充会 上川病院 院長、元東京都健康長寿医療センター研究所 副所長  高橋龍太郎先生